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サー室を出て行く万葉を、おどけたフリをして手を振って見送る。  なんか、もういいやという気持ちになったのだ。  万葉と井岡が異様に仲が良いことには気付いていた。自分は思い上がっていたのだ。彼がきっかけでサークルに入ったわけだし、その後もそれなりに仲は良かったが、万葉も井岡のことが好きだと知って、今更万葉と奪い合ってまで、井岡に執着する気にもならなくなったのだ。万葉も井岡先輩のことが好き。そうかそうか。それならそれで、万葉が井岡とくっついてくれればいいと思った。  自分の井岡への気持ちはその程度だったのかと、悲しくなった。  でも違う。私はたしかに本気だった。  どうして、自分が傷つく道と分かっていて、そちらの道を選んでしまうのだろう。  画面に目を戻した。行幸が撮った映像に、あおいが笑っているものはほとんどない。  あんまり笑わない子供だな、とぼんやり思う。やっぱりこの子は私に似ている。
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