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「こだまちゃんは眠ったよ」
祖母はそう言った。僕がどこか気味悪がっているのを悟っていただのだろうか。どこか申し訳なさそうにそう言ったのだ。
「じいちゃん、本が好きだったからね、たくさんあるのよ」
「本が好きで、高いところも好きで、ほら、あの庭の一角にある木に登って、そこで読むのがとても好きだったの」
「何度か木から落ちて、腰を痛めたりしたのに。それだも懲りない人だったわ」
そんな祖父の思い出話をとりとめもなく、祖母は話し続けた。
僕はただ黙って話を聞いていた。元々そういう役目のために送り込まれたのだと、それは最初から諦めていたから。まあいいかと思っていた。
「あの木も、こだまちゃんも私たちとずっと一緒だった」
「ああそうだ。ほら、これを見て」
祖母はそういうと、祖父の本棚から一冊のアルバムを取り出した。
そこには若かりし祖父母の姿と、幼い女の子が写っていた。
「こだまちゃんはこう見えて、私たちよりうんと年上なの。ずっと見守ってくれているのよ」
そういえば、亡くなった祖父が、まるでお伽話のように語って聞かせてくれた話の中にそんな話があった気がする。
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