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すぐに消防に連絡して、庭に出た。
建物から離れていたし、強まってきた風の向きも悪くはなかったので、その火が家に燃え移ることはないだろうとは思った。
思ったけれど、大木を焼き尽くさんとする炎に立ち向かうには、僕と祖母ではあまりにも非力だったし、近づけは焼け落ちた枝の下敷きになる恐れすらあった。
ーおばあちゃんをよろしくねー
聞こえた言葉の向こう側に、髪の長い女の子が立っていた。
彼女は燃え盛る炎の中で、その炎のように揺らめいていた。
ようやく到着した消防に、火は消し止められたけれど、あの樹齢五百年の大木は、ものの数時間であっという間に消し炭になってしまった。
祖父の葬式のときより、一層小さくなった祖母が、祖父の仏壇の前でただじっと手を合わせていた。
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