となり

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となり

「たまには、おばあちゃんのとこに顔見せに行ってやって」  お母さんが急にそんなことを言い出したのは、春一番も吹き終えたくらいの、桜がようやくぽつぽつと開花宣言され始めたくらいだった。  そういえば祖父の四十九日法要も終わって、幾らかの時間が経過した頃だった。  僕にとって祖母は決して嫌いではなかったけれど、祖母の家はひどく面倒であった。  祖母の家は、田舎の山奥という中々交通の便も、日々の生活の利便性においても、それはそれは最悪極まりないところにある。  コンビニエンスストアなんて当然に無いし、一番近い個人商店ですら歩いていける距離ではない。  そんなところに簡単に行ってと言ってくれるなというのが正直なところであった。  春休みで、部活も何も所属していない僕は、ただ毎日をなんとなく過ごしていた。傍目でみれば無駄に時間を過ごしているようにでもみえたのだろう。  お母さんんの言葉には、暗にどうせ暇でしょというニュアンスが含まれていることを、僕はちゃんと理解していた。 「わかったよ」  本当はそんなことはないつもりなのだが、反論するような言い方はされてないし、断っても家に居づらくなるだけだし。僕には選択肢はないのだ。
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