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「静な、あんとき後ろ向きに歩いたんや。おまえの隣まで」
後ろ向き?振り返らんと、後ろ向きに下がったってこと?
「賢いよなあ、咄嗟にそれができるて、12歳で」
感心したように言いながらアラビアータを食べる保を見ながら、おかしくなっていた。
きっとあの日、静ちゃんも必死やったんや。やっぱり緊張してたんや。そやのに私のあのアクシデント。
焦ったやろなぁ。でもそんなこと咄嗟に。
虚空蔵さんに貰った知恵が効いたんか、効く前から静ちゃんは十分賢こかったんか。
くすくす笑いながら、12歳の静ちゃんに心の中で謝っていた。
「なあ、静が結婚して離婚してる間、ずっと待たせてごめんな。今年、院終わったらこのまま研究室残ることになったから、リッチな暮らしはできんけど必ず幸せにするから結婚しょう」
アラビアータで口の周りをテカテカにしている人に
「待たせすぎやわ」
そう言いながら、にやけて頷いた私の口の周りもテカテカかもしれん。
2回目のプロポーズをしてくれた保の誠実さだけは、よう知ってると思う。
12歳のときから。
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