〈 Ⅲ 〉

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保と良ちゃんはやっぱりなんかオチョケながら、ドアの付近にいる。 『げんぷくやのに』 心の中でちょっとばかにしたった。 電車が嵐山についたら、人の波のままにホームに降りる。 周りには着物の女子がいっぱいいる。子供一人やのにおじいちゃんおばあちゃんとお母さんお父さんの6人の大人が一緒にいる家もある。 鞄を自分で持っている私はあの子よりしゃんとしてるかもしれんなんて思いながら、ほんまはちょっとだけ不安やった気持ちは改札の静ちゃんを見つけて和らいだ。 「静ちゃん!おまたせ!」 その声に振り向いたのは、静ちゃんだけやなかった。 「堤と桜木やんけ。二人ともマゴにも衣装やのう」 保と良ちゃんに見つかってしもうた。 「萌ちゃん、おんなじ電車やったんや」 静ちゃんが保を無視して言ったから、私も無視する。 桂川に向かう。保と良ちゃんは随分前の方を歩いていた。 「ほんまこんなとこまで来てオチョケやわあ」 二人の背中を見ながら言った静ちゃんは、やっぱりちょっと大人っぽく感じる。着ている着物が緑やからかもしれん。緑地の上に、色とりどりの花が描かれた着物はなんか今風で、おしゃれやった。 私はお姉ちゃんのお古で赤ベース。七五三のときも赤い着物の写真がある。赤ばっかりや。 「自分の好きなん借りたかったなあ」     
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