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ポツリとこぼれた言葉を静ちゃんは、すかさずキャッチしてくれる。
「着物?なんでぇ、萌ちゃんのかわいいやん。しかもよう似合うてるよ」
しっかり者の静ちゃんとは一年生の頃からの仲良しで、いっつも一緒におった。
小さいときから静ちゃんがずっと隣にいてくれはったから、私はこんなぼうっとした子になったんかもしれんなあ。
でも、隣に静ちゃんがいてくれたら安心してられる。
「萌ちゃん、結局、漢字なににしたん?」
桂川が見えたとき、静ちゃんがそう聞いてきた。砂利道を歩くザッザッという音が気になるんは、ようけの人がいはるせいかもしれん。
「静ちゃんは?」
「私は知恵の『智』」
そう言いながら、空間に指で文字を書く。
「萌ちゃんは?」
私は『夢』という字と『幸』という字で迷っていた。
漢字をひとつ選ぶのは、十三まいりの大切なことのひとつ。
虚空蔵さんについたら、受付で祈祷の申込をする。申込用紙に自分が好きな漢字をひとつ、筆で書く。その願いがかなうように祈祷をしてもらう。
知恵を授けてほしいから静ちゃんは『智』。
私はやっぱり『幸』にしよう。どんな形でも幸せにはなりたいからなあ。
頭の中でようやく漢字を決めたときに渡月橋に差し掛かった。
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