18人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
〈 Ⅳ 〉
お参りを終えて、山門を出たらいよいよや。
振り返ったらあかん。
隣の静ちゃんも緊張してはる気がする。
帰りは表参道の方から帰る。すれ違う子らがみんな自分より子供に思えるのは、お父さんやお母さんが一緒にいはるからやないんかもしれん。
私らは子供から大人になる最初の試練に挑戦している。すれ違う子らはまだや。表参道のお店をキョロキョロしながら歩いている。
私の前を行く子らも、背中から緊張している感じが伝わってくる。
静ちゃんも私もなんも喋らんと、もう少しで渡月橋というとき、後ろからおちょけた声が聞こえた。
「良!100円落としたで!」
保の声や。
「萌ちゃん、ほっとこ」
静ちゃんの言葉に頷いて歩いた。
さっき足痺れて良ちゃんに支えてもろてたのに、良ちゃんを振り返らそうとしてるんやん。あほやわぁ。
保だけやない。渡月橋に入ったら子供についてきた大人達がやいやい言い出す。笑いながら自分の子供の名前を呼んだり、『忘れもんしてんで』とか嘘を吐いたりする。我が子が頑張ってんの、親が邪魔するかぁ?うちのお母さんやったらどうするんやろ?
渡月橋に入ってすぐに
「桜木、帯ほどけてんで~」
と後ろから声がした。
えっ?帯?
最初のコメントを投稿しよう!