〈 Ⅳ 〉

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〈 Ⅳ 〉

お参りを終えて、山門を出たらいよいよや。 振り返ったらあかん。 隣の静ちゃんも緊張してはる気がする。 帰りは表参道の方から帰る。すれ違う子らがみんな自分より子供に思えるのは、お父さんやお母さんが一緒にいはるからやないんかもしれん。 私らは子供から大人になる最初の試練に挑戦している。すれ違う子らはまだや。表参道のお店をキョロキョロしながら歩いている。 私の前を行く子らも、背中から緊張している感じが伝わってくる。 静ちゃんも私もなんも喋らんと、もう少しで渡月橋というとき、後ろからおちょけた声が聞こえた。 「良!100円落としたで!」 保の声や。 「萌ちゃん、ほっとこ」 静ちゃんの言葉に頷いて歩いた。 さっき足痺れて良ちゃんに支えてもろてたのに、良ちゃんを振り返らそうとしてるんやん。あほやわぁ。 保だけやない。渡月橋に入ったら子供についてきた大人達がやいやい言い出す。笑いながら自分の子供の名前を呼んだり、『忘れもんしてんで』とか嘘を吐いたりする。我が子が頑張ってんの、親が邪魔するかぁ?うちのお母さんやったらどうするんやろ? 渡月橋に入ってすぐに 「桜木、帯ほどけてんで~」 と後ろから声がした。 えっ?帯?     
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