〈 Ⅴ 〉

1/4
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ

〈 Ⅴ 〉

久しぶりに十三まいりのことを思い出したんは、静ちゃんに会ったからなんかな。 東京の大学に行った静ちゃんは卒業と同時に結婚して私らを驚かせた。 結婚式から二年ぶりに会った今日、 「やっと離婚できるようになった」 とケラケラと笑った。 「静、元気やった?」 小さいテーブルの上に、作りたてのスパゲティ・アラビアータを置きながら保が言う。 「うん、元気やったけど離婚すんねんて」 「離婚?なんで?」 「ご主人の浮気」 結婚して一年目にご主人の浮気に気づいた静ちゃんは、許されへんかったらしい。一年間我慢しながら浮気の証拠を集めた。 「静ちゃん、一年の間に証拠集めながら勉強しはってん。ほんでやっと行政書士の資格取ってんて。ご主人が稼いでくるお金で資格取ったったって言うてた」 「さすが静やな」 そう言って私の前に座った保は、「いただきます」と手を合わせてからスパゲティを食べはじめる。 あの十三まいりの後、私は中学生になって普通に三年間を送り、高校生になった。 腐れ縁みたいにおんなじ高校にいた保に、二年のときにいきなり告白された。 「萌香、俺と結婚を前提に付き合ってください!」 生まれて初めての告白は、そのままプロポーズやった。     
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!