十三まいり

〈 Ⅲ 〉

座るときは袖を揃えて前に垂らす。帯があるから凭れない。
お母さんに言われたことを思い出しながら、シートにあさく座った。
「十三まいり？かいらしいこと。一人でえらいわぁ」
隣に座ったおばさんに言われて、
「ありがとうございます」
と小さく頷いて言った。
なんか自分がしゃんとしてるみたいでこそばゆくなる。

桂駅で降りて嵐山線に乗り換える。お参りの人らと観光客で嵐山線は満員やった。外人さんの大きなキャスターバッグに手を添えさせてもらったとき、なんか英語で言われて写真を撮りはった。ちょっと恥ずかしいけど嬉しい。着物が珍しいんかなぁ。
同じ車輌に同級生が乗ってることに気がついたのはそんな時。ちょっと離れたところに、同級生の男子、保(たもつ)と良(りょう)ちゃんが乗ってる。
オチョケの二人はこの前に貰いに行ったばっかりの新しい中学の制服姿。女子はみんな着物やけど、男子は中学の制服がほとんどやってお姉ちゃん言うてた。
ちょっと前なら『男子は楽やな』って羨ましかったかもしれんけど、今はそんなことなかった。ブカブカの制服姿の男子より、着物の女子の方がオトナな気がした。