8人が本棚に入れています
本棚に追加
『 I love only you. 』by.ayaka
【かわりのことば 『この言葉を忘れるなよ』】
窓に触れると、指先から凍っていくように冷たい。視線を外に向ければ、今年初めての雪がチラついている。
舞い降りる清涼な雪は、あいつの純真さを思い出させた。
そんな柄でもないことを考えて、息を吐く。
「せーんせっ! 雪、綺麗だね!」
今しがた目を奪われていた雪を指さして、お前はいつもと変わらない笑顔で言う。
「お前よりは綺麗なんじゃない?」
「ひどい! ね、先生」
「何?」
「好きだよ」
「ばーか」
俺の返事に一瞬笑顔をひきつらせたが、またすぐに笑顔に変わる。
「……冗談だよ」
その言葉は嘘だと知ってる。
何度も言われた言葉。言われる度にあしらってきたが、お前の目が真剣なことも、想いが真っ直ぐであることにも気付いてる。
だけど、俺は教師で、お前は生徒なんだよ。
「なぁ、問題」
「え?」
俯くのを堪えたお前の様子に、胸が痛む。俺は黒板にチョークを走らせた。
靉靆
「何、この字」
「宿題。卒業式の日、読み方を教えてやる」
「めんどくさい!」
「いいから。絶対にこの言葉を忘れるなよ」
ぶつくさ言いながら、席へと戻っていく後ろ姿を見つめる。
『(靉靆)あいたい』
お前が卒業した時、今は言えない想いを伝えたい。
本当はとっくの昔に返事は出ているんだ。
〈お前だけを愛してる〉
by.小鳥遊絢香様
https://estar.jp/users/119809936
最初のコメントを投稿しよう!