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「あ、いや…それは…」
鷲尾は随分と歯切れが悪そうに話すと、周囲をちらちらと気にし始めた。その様子に、不審に思った会場の警備と見られる男数名が、すぐに鷲尾の周りを取り囲んだ。
「何か問題でもございましたか?」と、警備の男のうちの1人が鷲尾の腕を掴んだが、鷲尾はふるふると頭を左右に振ると、
「あんた、兎束さんよ。わしは何も話しとらんよな?な?なあ?」
と、必死な形相で裕介に訴えかけてくる。実際に、鷲尾は何も話していないため
「ええ、何も聞いておりません。警備員さん、私は何も聞いていません」
と答えると、ようやく鷲尾の腕を掴んでいた警備員は腕を離し、軽く2人を睨み付けると、裏口からどこかへと帰っていった。
「鷲尾さん、どうやら私がおかしな質問をしたみたいで…本当に申し訳———」
「あんた!もう、わしのことは放っておいてくれ!」
と裕介が謝罪をしようと頭を下げかけたところで、鷲尾は大きく叫び、裕介とは別の列に並び直してしまった。
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