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夜になると、娘夫婦らが孫を連れてやって来た。そして、ささやかなパーティーが始まった。
「お母さん、長年お仕事、お疲れ様でした!」
「おばあちゃん、お誕生日おめでとう!」
「お義母さん、還暦おめでとうございます!」
やれやれ、人というものは、同じ事柄に対して、ここまで認識が乖離するものかと、妙子は娘家族の気持ちを感謝すべきと分かりながら、依然として現実を受け入れる事が出来ないでいた。
「お母さん、何か趣味でも見つけなきゃね。家にばっかり居たら、老け込んじゃうわよ」娘が余計な事を言う。そんな事、言われなくても分かっている。
「うちの近くの公民館でダンス教室なんてやっていますよ」と更に娘婿が追い打ちを掛けてくる。
あんなのは、80婆さんがするもんでしょうが──妙子の心は祝いの席で滑稽なくらいにささくれ立っていた。
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