電球が切れたなら

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「たぶん、自分じゃ気づかない匂いです」    変化は様々なところで起きていった。  服や下着は新調したし、年相応のものではなく、少し若めのものを無意識に選んでしまい、家に帰ってから開けてみると、デザインが若すぎたなんて後悔もすることもあった。  そして、夢をもう一度追いかけてみようと思った。そのきっかけは彼が二回目に家に来た時だった。行為が終わった後、腕枕をする彼に尋ねた。 「君は小さい頃、何になりたかった?」 「薬剤師」 「じゃあ、夢が叶ったんだね」 そう言って彼の胸を優しく撫でる。 「でも、もっと活躍したい。今、薬局で地域の人達をいかに健康にできるかっていうのを研究しているんだ。その結果が出たら来年の学会で発表する予定」 「学会かぁ……」 高卒の私には『学会』というものがすごく高尚なものに思えて、年下ながら彼を少し尊敬する。 「うまくいくといいね」 「うん」 彼の口元は少し笑っていて、目をつぶっているけれど、未来を見据えている気がした。 「小さい頃の夢は何だった?」 「セーラームーン」 「なにそれ、可愛い」 「幼稚園の頃だけどね。セーラームーンが好きで、悪を倒してタキシード仮面とデートしたいと思っていた」  変身アイテムのコンパクトのおもちゃを買ってもらって、変身ポーズを真似てみたけれど、変身できるはずもなく、いつしかセーラームーンにはなれないと気づいたときに、新しい現実的な夢が生まれた。 「それと、パン屋さんになりたかった。近所に美味しいパン屋さんがあって、そこのクリームパンがすごく美味しくて」     
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