電球が切れたなら

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 準備が整い、そろそろ彼がくる頃かなと思うと、少しずつ心拍数が上がり体が熱くなる。  彼と出会ったのは、薬局だった。  私はもともと甲状腺機能低下症という病気を持っている。  病気がわかったのは中学生の頃で、理由のないひどい倦怠感で病院を受診してみたところ、甲状腺機能低下症と診断された。といっても、重症ではなくただ甲状腺の機能が人より少し低下しているだけ。低血圧や倦怠感はあるけれど、ホルモンを補充するための薬を服用していれば、普通の人と変わらず過ごせる。死ぬような病気ではない。  三ヶ月に一回、近所のクリニックで受診し、処方箋をもらったものの忙しさにかまけて薬局に出すのを忘れてしまっていた。  処方箋の期限は受け取ってから四日以内で、その間に薬局で薬をもらわないと無効になってしまい、またクリニックに行かなければならない。それはひどく面倒なので、受け取ってから四日目の休憩中に職場近くの薬局へ駆け込んだ。  処方箋を受け付けに出して、待合のベンチで待つと他に患者もいなかったため、すぐに名前を呼ばれた。  薬を受け取るカウンターには、いかにも働き始めてまだ二、三年という見た目のフレッシュな薬剤師が立っていた。白衣を纏った細身で短髪の彼はすずらんのようだった。     
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