電球が切れたなら

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 話し方は少したどたどしかったけれど誠実な印象で、薬の説明を受けいくつか質問に答えた。だいたいどこの薬局でも聞かれることは変わりなく、適当に答えた。 「今日は〇〇円になります」 「あっ、はい」  手に持った財布からお金を取り出していると、 「あの、あそこのカフェで働いているんですか? 僕、休みの日によく本を読みに行くんですよ」  店名が書かれたカフェのTシャツにカーディガンを羽織っただけの私の格好を見て彼は言った。 「あっ、そうなんですか。ありがとうございます」  少し恥ずかしくなって軽く頭を下げて、お金を出して顔を見上げると、キラキラとした爽やかな笑顔を向けられてしまい、年甲斐もなく照れてしまった。  次の日曜日の午後に彼は一人でカフェにやって来た。 「いらっしゃいませ」 「あっ、こんにちは」  彼を席に案内すると、ベーグルランチを食べながら薬の本を読んだ。勉強熱心なのがまた可愛らしい。帰り際「また来ます」と言って帰った。  それから彼は、休日なのか毎週水曜日と日曜日に来るようになった。というか、来たのに気づくようになった。  来たときには「体調はどうですか?」と気遣ってくれたり「今日のおすすめはなんですか?」とか、聞かれたり、時折他愛もない世間話なんかもするようになった。     
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