電球が切れたなら

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 そして、出会ってから二週間目の来店時には「今日は何時までですか?」と聞かれ、連絡先が書かれた付箋を渡された。  なんとなく気があるのは態度でわかっていた。しかし、私はもう三十五歳だ。おそらく彼とは十歳は離れている気がする。連絡して良いのか迷ったけれど、家に帰ってからすることもなかったので「こんばんは」とメッセージを送るとすぐに返事が来た。  こんなに返信が早いのは若さゆえだろう。  何度かやりとりをしているうちに、今度飲みましょうという話になって、私の行きつけの店に誘った。  そこはカウンターのみのこじんまりした小料理屋で五席しかないので知り合いと会うこともない穴場だ。そして、自宅に歩いて行けるほど近い場所にあるのでいきつけにしている。 二人並んで座るとふとももが触れるくらい狭いカウンターに腰掛ける。とりあえずのビールで 乾杯をすると、私のセレクトで適当に料理を頼んだ。  お腹が空いてそうにみえたので、塩焼きそばとオイルサーディン丼、クリームチーズの醤油おかか合えを頼むと、ほとんどすべて一人で完食した。私は横で美味しそうに食べる彼を見ながらナッツをつまみに酒を飲んでいた。  小一時間で彼はお腹いっぱいになり、私はちょうどよく酔っ払っていた。  満腹になって満足そうな彼をみて「行こっか」と言って、店を出た。     
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