電球が切れたなら

『電球が切れちゃったから、取り替えて欲しい』

　メッセージを入力し、送信ボタンを押すと『今から行く』と返事が来た。土曜日の夜にすぐに返事が来るというのは、まだ彼女ができていないということだろう。

　私の家に来るのはこれで三度目。
　彼の家からすぐに来るとしたら三十分はかかる。その間にシャワーを浴びて新しい服と下着に変える。
　電球が切れてしまったのは洗面所の天井。バスルームの電気をつければ洗面所が真っ暗になることはないけれど、薄暗い中でアイメイクをしても細かいところが見づらいのでギリギリまで顔を鏡に近づけなければならず、143cmという低身長の私だと背伸びが必要でそれだけでくたびれてしまう。いつまでもこのままではいけないと思い、彼に電球を変えてもらうことにした。
　メイクを直し終わり、歯を磨く。水で口をすすいでから、マウスウォッシュを含む。年齢が上がるにつれて自分の口臭も気になってきた。今まで指摘されたことはないけれど、会社の上の人は時折臭うから早くから気をつけておかなければいけない。ミント味のそれを吐き出すと口の中に爽快感が広がった。