2人が本棚に入れています
本棚に追加
お昼休み
お昼休み。有馬奏楽は親友の村雨美穂とともに文芸部の部室に走った。
「美穂、急いで!場所とられる!」
「もう…お花見で場所取りして争う人じゃないんだからさ…」
駆け込んだ部室は案の定、誰もいなかった。
「よし、いっちばーん!」
嬉々とした表情を浮かべ、奏楽は小さな箱を手に取った。
中に入っているのは色とりどりの札たち。
すなわち五色百人一首の札だった。
「何色でする?」
美穂に問われ、奏楽は首を捻る。
しばらく考えたあと口を開いた。
「ピンクは?私、ピンクがいい」
「えー、奏楽ピンクの札得意でしょ。私負けちゃう」
そういいながらも美穂は箱からピンクの札を取り出した。
優しいね、美穂は。
「じゃ、始めよっか」
「うん」
録音したデータを再生する。
まずは序歌から。
「難波津に 咲くやこの花 冬ごもり・・・」
ふうっと美穂が息を吐く。
と
「すみませーーん」
部室の扉が開かれる。
「ふえっ」
奏楽の口から情けない声が漏れた。
「小倉センセーいませんかーーっていないか」
のんびりとした声とともに入ってきた人を見て、奏楽は言葉を失くし美穂はにやついた。
最初のコメントを投稿しよう!