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矢や弾に当たり、敵軍の兵が幾人か倒れた。だが決して行軍を止めることはない。
竹の束を頭上に掲げ、城に近づいてくる。これで矢弾を防ぐのだ。その一方、鉄砲衆は大きな木製の盾――搔楯を地面に置き、その影で鉄砲を構える。
鉄砲の撃ち合いが始まった。
その間にも他の足軽たちは城へと近づいてくる。
彼らは梯子を持っていた。
かなり大きなもので、堀を越えて三の郭に届くだろう。ちょうど、宗一郎達のいるところだ。
「梯子を掛けさせるな!」
宗一郎は叫ぶ。
敵の思惑は考えずともわかる。梯子を使い堀を越え、城壁をも破ろうというのだ。
「湯と礫を見舞ってやれ!!」
「あいよっ!」
宗一郎の下知に応え、三の廓の忍び達はいっせいに沸きたった湯や、拳ほどもある石を下へ落とした。
流石の獅子島の兵達もこれには完璧な冷静さを保ってはいられなかった。一気に勢いが弱まる。
それでも城壁に梯子の端が掛かりかけた時は、宗二郎が動いた。梯子を蹴飛ばし、時には槍の柄でもって梯子を壊した。
そんなことが、昼近くになって獅子島軍が退くまで、ひたすら繰り返された。
あと数日間は、このような単調な戦が続くだろう。そうして獅子島の軍が疲れきったところで、攻勢に出る。それこそが弓張城の主・冴の狙いだ。
――だが、獅子島能成は、そう甘い相手ではなかったのだ。
弓張谷の者達にとって、あまりにも意外なことが起こったのは、戦が始まって二日目のことだった。
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