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「さ、もうお風呂できたから、服脱いで入って、ほら」
「子供じゃないって言ってんだろ」
「うんうん、わかってる。大学生なんだよね」
そうは言うものの、優人は彼方の服まで脱がせようする。それを押し返そうとしたところで、彼方はなにかを思いついたように口端を上げた。
「ふーん、脱がしてくれんの、おにいさん」
彼方は少し上目遣いに首を傾げて、まるで誘惑するかのように目を細める。しかし、優人は一度瞬きすると、満面の笑みを浮かべた。頼られて心底嬉しいという感情が漏れ出してきているようだ。
「もちろん。張り付いてて、脱ぎにくいからね。手伝うよ」
「…………」
彼方はあまりにも色気のない返しをする優人を半目で見返しつつ、この先の事を考えて、苛立ちを抑える様に拳をギリギリと握った。
脱衣所に入るように促してくる優人の腕から逃げる様に浴室に飛び込む。勢いに任せて湯に浸かれば、彼方は温かな気持ちよさにほうと溜息を吐いた。つま先がジンジンと痺れを感じるが、冷えた体が求めていたものだ。
「きもち……」
思わずつぶやいた直後、彼方は慌てて首を振った。
「クッソ、調子狂う。なんだよ、あの空気のよめなさ……むかつく……」
彼方の計画はまだ始まってもいない。
これから見られるだろう優人の焦る表情を思い浮かべつつ、彼方はふっと嘲笑を浮かべた。
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