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王都の壁のほぼ真下に辿り着いたのは、森を抜けてからおよそ一時間半後だった。
「交通証またはギルドカードをお見せ願います」
王都内に入るためには、身分証明が必要なのである。
交通証は商業組合が発行しているもので、見た目はただのネックレスとなっている。
しかし、ネックレスのアクセサリーにあたる、小さな金属と皮でできたものには様々な個人情報がのっており、専用の魔道具──現代日本で言う、クレジットカードをのせる機械──を使って情報を読み取っている。
読み取ると、水晶を削って作られている水晶板に、個人情報が載るらしい。
ギルトカードも同様で、同じような仕組みになっている。
「俺は持ってるが、こいつは持ってないんだ。どうすればいい?」
「そのお姿は電狼様ですね。まあ、電狼様なら変な人を王都に入れないでしょうし……。この許可証を持って、ギルドに行き、カードを作成してくださいね」
ジランはもともと着ていた服にフードが付いていた為、それを被っている。
どうやら身バレ防止らしい。
話を聞いたところ、やはり人類最強らしく、称号があるのだとか。
ジランは〔音速の電狼〕と呼ばれており、素早い動きで相手を撹乱し、スパッとやるらしい。
門番は手慣れたものらしく、素早く紙に何かを記入すると、オレに渡してきた。
「あ、ありがとうございます」
「いえ、これも仕事ですので……。ところで、電狼様。いつ頃その素顔を拝見できるのでしょうか」
「誰が見せるか。アホ門番。大体、お前が敬語使うとか世界の終わりだろ」
「あははー。それは酷すぎですよー」
でも、門番とのやりとりを聞く限り、知り合いだよね…。
「あー、もう。分かったから。さっさと行きな。そうじゃないと逮捕しちゃうぞ☆」
「ふざけんな。じゃあな」
何故か最終的には門番が負けて、ふざけたのを華麗にスルーしたジランは門を潜っていく。
そのあとを慌ててオレは付いていった。
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