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「………この方って誰だろう」
考えていると、さっきの医者が来る前に慌てて部屋に入ってきた男性が入ってきた。
「さっきはすまなかった」
挨拶を終えるなり、そう言ってきた男性。
しかし、この男性に見覚えはない。知り合いかな。
「君と私は知り合いではないよ。初対面だ。しかし、君は私に昔懐かしい感覚を覚えているだろう。いや、私個人と言うよりもこの『空間』にかな」
この人が言うことは事実だ。
オレはこの病室を見たことがあるような気がするし、この人のことも知っているような気がする。
でも、刺されるまでに1回も入院したことは無いし、こんな外国人風の男性にも会ったことは無い筈だ。
「それはそうだ。私は神だからな」
「…………はい?」
意味が分からないんですけど……。
「言葉の通りだ。春原 蒼くん。君が私を見たと思っているのは君の中に眠っている記憶だろう。そして、この空間は君が生まれた場所だからじゃないかと私は思う」
生まれた………?
「生まれたって俺は、市内の病院で……」
「それは今の記憶だろ?生きていく上で都合の良いように書き換えられている」
「そんな……。それじゃあ、今までオレが生きてきた記憶は!?」
今まで、家族や友人と過ごしてきた時間は………。
「それは本当のことだ。私が言いたいのは、君の魂のことさ」
「魂……?」
「魂の形成はこの空間で行われている。君たち人間に宿っている魂は、仮初めの魂。………君は『死神』についてどれぐらい知っているかな?」
それぐらい知っているよ。
「人の魂を刈る者……かな」
簡単に言うと、だけど。
「それは地球で一般的な死神像なんだ。でも、死神の『本来の』仕事はそうじゃない」
え……。
違うの?
「死神の仕事は幅広くてね………。魂を地球に生まれる赤ちゃんに宿すこと。その者の成長を紙に書き写すこと。成長しきった魂を摘み取ること。この3つに分けることができる。地球の人には最後のことしか伝えてないから、そんな死神像となっているんだ」
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