CHORNO-BOG

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 予感は的中した。およそ最悪とも呼べる事態が、わたしに降りかかったのだ。  この塔の中で、既に異常と呼べる出来事は無数に起こっていた。その時点でわたしが気がついているものもあれば、気がついていないものも含めて、だ。  わたしはやはり、何かがおかしいという漠然とした違和感を飲み込めずにいた。  監視カメラに、誰の姿も映っていないのだ。非常階段にいる未玖は仕方がないとしても、二階、三階、四階と順にカメラの映像を確認した結果、住人はどこにも映っていなかった。それはどうにもおかしいことのように思えてならなかった。全員が全員、部屋から一歩も動かないなんて、そんなことが有り得るのか……?  そしてそれは、六階の映像を開いた時のことだった。  わたしは視界の端に、何やら光るものを見つけた。目をこらす。箱のようなものが、地面に置かれている。その箱の上に乗っかったランプが点滅し、光を放っているのだろう。  これは一体、何なのだろうか。わたしは唾を飲む。各階の監視カメラは数箇所に設置されている。わたしは同じ階の、別の場所の監視カメラの映像に切り替えた。先ほどとは異なり、廊下を縦に捉えたカメラのため、より広い視野を捉えている。 「え……」思わず声が漏れた。わたしはそこに、奇妙で不吉なものを感じた。  数メートル間隔で、箱がいくつも置かれている。  そのどれもがランプを点滅させ、微かな光を放っている。何だこれ。誰がこんなことを。いや、そんなことは決まっている。  未玖だ。こんな馬鹿げたことをするのは未玖しかないない。だが一体、未玖は何をしようとしているのだろう。わたしは考える。  未玖が今、最もしたいことは何だ。警官隊の到着を阻止することではないだろうか。わたしの元にたどり着かせてはいけない。なら、この箱はそれに関与した何かではないのか。  突如として浮かんできたその可能性に、わたしの背筋につうと悪寒が走った。  形状、ランプ、間隔をあけての配置。まさか、まさかこの箱は……。それはある意味、最悪の可能性と呼べた。だが、それしか思い浮かばなかったのだ。いつの間にか、口の中がからからに乾いていた。  これは、爆弾なのか。  その瞬間だった。塔内のかなり下の方から、地響きのような凄まじい音、それに続いてコンクリートが崩れるような爆音が鳴り響いた。
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