CHORNO-BOG

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 地面がぐらりと激しく揺れる。モニターの映像が一瞬眩く光を放った。わたしは目を細める。映像が激しく乱れている。やはりわたしの予想は当たっていた。  未玖は六階を丸ごと爆破した。  わたしは至急窓を開き、身を乗り出して下の階を目で捉えた。わたしは思わず息を飲んだ。かなり下の方から激しい炎が上がっている。がらがらとなにかか崩れるような音、外では何やら叫んでいる声も聞こえた。直後に、部屋中に警報が鳴り響いた。  火災報知器が発動したのだ。火事です、火事ですと無機質な声が繰り返している。わたしは窓の外、遠くにパトカーが走っているのを発見した。だが、この火災で彼らはここに入ってくることが不可能になった。消防隊が駆けつけたとしても、消火活動にはかなり困難を要するだろう。  少なくとも、未玖がこの部屋に到着する程度の時間はかかる。  このままじゃ籠城は失敗に終わる。わたしは未玖に無残に殺されてしまう。  わたしはふと、肝心なことを思い出した。モニターへ向かう。五階、四階と爆破されたのより下の映像を確認していく。やはりそうだ。  誰も映像に映っていない。誰もこのマンションから逃げ出していないのだ。明らかにおかしい。爆破より上の階なら、炎のせいで下に降りることができないから部屋の外へ出ないのはわかる。だが、下の階の住人にとって部屋にいるメリットはない。  わたしは目を瞑り、考える。  なぜ住人は部屋から出ようとしないのか。監視カメラに誰も映っていないのはなぜなのか。まるでこれでは、このマンションに誰もいないようではないか。  だが未玖でも、マンションから人を消すなんて芸当はさすがに不可能のはずだ。そう、何か魔法のアイテムでもない限りは。  わたしはその時、ようやくあるひとつの可能性に思い至った。住民全員を動かし、マンションの中を無人にできるほどの力を持った魔法のアイテム……。  わたしは振り返った。火災報知器が発動している。
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