7人が本棚に入れています
本棚に追加
わたしはモニターを再び動かした。通信記録の画面を開く。やはり、そういう事だったのか。わたしはその事実に、些か驚きを隠せなかった。今からおよそ三五分前、つまり午後十一時二分から二八分の間の二六分間。
この部屋のみが、外部との通信を遮断されていた。
つまりこの部屋で火災報知器が作動しなかったのは、階下で火事が起きたという事実が伝わっていなかったからということになる。おそらくこれは、全て未玖の計画したことだ。
さらに、十一時二分から二八分といえば、ちょうどわたしが眠りについていた時間ではなかったか。目覚めた時の時刻が確か十一時二九分だった。もしかして、わたしが眠りについていたのも全て未玖が計らったことなのだろうか。
ワインの中に睡眠薬が混入していたのかもしれない。火災報知器が作動しなくとも、わたしが階下の騒ぎに気がつき、避難してしまう可能性は十分にある。それを避けるための行為だったと考えれば、納得もいく。
わたしは息を飲んだ。
未玖はそこまでして、わたしをこの塔の中に孤立させた。わたしにじっくりと恐怖を与え、そして殺すために。
何が彼女をそこまでさせるのか。わたしにはそれが、まったくもって不可解なことだった。わたしが未玖に何かをしたというのか?
違う。わたしは常に、未玖にだけは嫌われまいと優しく接してきた。わたしが未玖に恨まれるようなことだけは、絶対にない。
なら。
わたしの胸の奥がずきりと痛んだ。
ならどうして、未玖はわたしを殺そうとするのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!