CHORNO-BOG

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 窓の外から聞こえてくるサイレンの音は、次第に大きくなりつつあった。  先程の爆破により、おそらく騒動は激化している。もし現在テレビが使えれば、もう既にメディアでは大々的な報道が行われているかもしれない。  わたしの籠城作戦を阻止し、完璧にわたしを袋の鼠とまで追い詰めた未玖。  彼女はできるだけ早く、決着をつけたいと考えるはずだ。  おそらくだが、未玖は六階に爆弾を設置するのにかなり時間を消費したのではないだろうか。住民の避難が済む以前からあの人目につきやすい場所に爆弾が堂々と置かれていたとは考えにくい。つまりまだ、未玖はそこまで上の階には達していない。  ということは、彼女の立場としては、わたしがまた何かを画策しているのではないかと警戒を始める頃だろう。何せ戦闘開始から少し時間が経ち、わたしの頭も冷えてきたところだ。きっと未玖は、わたしにはそれだけの余裕があると考えている。  そしてそんな状況で、未玖はわたしの動きを封じ込めようとしてくるはずだ。前述の通り、戦いは後半戦にさしかかろうとしている。時間が経てば経つほど、相手、つまりわたしの動きは予測がつかなくなってくる。  そうなれば、彼女としては自分に有利な方向へ持っていこうとするのが自然だろう。  つまり、未玖は必ずまた何かしらの行動を起こす。  現状では、わたしはそれを指を咥えて待っているしかない。こちらから出向いて、結果爆弾でドーンなどという結末はごめんだ。未玖の居場所を掴むまで、行動は危険すぎる。  だがそれでも、わたしが早急に何か応急的な対策を講じなくてはならないのも事実だ。  消防隊はおそらく救助に来ない。一度目のボヤ騒ぎの時に、このマンションの住人は皆外へ避難してしまっている。正真正銘、この塔に残っているのはわたし一人だけなのだ。  たった一人くらいなら、いくらでも誤魔化しようがある。おそらく消防隊には、既に全員が避難を完了させているとの誤った報告が未玖によりされているはずだ。きっとわたしがいないということすら気がつかれていない。
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