CHORNO-BOG

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 その瞬間だった。ばちぃんととてつもなく大きな音が聞こえて、わたしは目を反射的に瞑った。何かが破裂したのだろうか。わたしは目を開く。部屋の中は、真っ暗闇だった。ブレーカーが落ちたのか?  シャンデリアの光も消えているようだった。  とりあえず、ブレーカーを復旧させなければ。そう思って、手探りで歩き始めてすぐのことだった。わたしは明らかな違和感に気がついた。  暗すぎる。暗すぎるのだ。いくらブレーカーが落ちたとはいえ、ここまで暗くなるわけがない。なぜならそう、本当なら窓の外の町並みの明かりが多少なりともあるはずなのだ。ないのは、おかしい。  わたしはとっさに振り返った。 「え……?」思わず声が漏れる。  それもそうだろう、窓の外に広がっていたのは、どこまでも続くような、深い暗闇だったのだから。  東京の街から、光が消えている。  さっきまであんなに輝いていた街から、一瞬にして灯りが消えた。高層ビルや駅前に密集する飲食店、ホテルからも、全て。  状況の把握ができない。ただとてつもない不安が、身体中を這い回っている。どうして、なぜこんな。嫌だ、助けて欲しい。わたしは目を瞑り、その場にうずくまった。  暗闇があまりにも怖かった。違う、そんな具体的な言葉で表せるような恐怖ではない。もっと抽象的で、けれど圧倒的な恐怖だ。  早く、早く終わってくれ。それだけを願い続けた。心のどこかでは、この暗闇は永遠に終わらないんじゃないか、そんな気もしていたのだ。  しかし、予想に反して停電はあっさりと終わった。  窓の外の景色に、だんだんと光が灯り始めた。奥から順に街並みは光を取り戻し、やがてこの部屋も電気がつくようになった。  わたしは安堵すると共に、少し拍子抜けした気分だった。  とりあえずテレビをつけよう。停電の原因に関して、何かしらの報道はあるはずだ。わたしはテーブルの上に乗せられたリモコンを手に取り、電源のスイッチを押した。  だが、結果としてわたしがテレビを使うことは叶わなかった。
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