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突如として、部屋の中にとてつもない音が鳴り響いた。わたしはびくっとして、とっさに振り返る。電話のコール音とも違う、この音は……。
わたしは再び、はっと息を飲み込んだ。この音は、警報だ。
警報が、部屋中にけたたましく鳴り響いていた。
『棟内部に、侵入者が発生しました。侵入者は武装しています。住人は直ちに安全を確保し、警官隊の到着を待ってください。繰り返します、侵入者が……』
侵入者? 侵入者だと?
わたしは混乱した。一体なんだというのだ。何が起こっているというのだ。
わたしはマンション内のセキュリティと監視カメラの映像を確認するため、ダイニングに隣接している部屋の一番中央のモニターへ向かった。ここにはセキュリティシステムの動作状況や不備不具合、各階に設置された防犯用のカメラの映像など、本来は管理側の人間ではないと観られないものがすべて詰まっている。
起動に数秒を要する。その時間が酷く長く感じられた。未だにアナウンスは続いている。その無機質な声が、わたしをさらに不安にさせた。
ようやくモニターがついた。
そして映し出された監視カメラの映像を見て、わたしは愕然とした。現実が暗い闇に支配されていくような、そんな感覚がわたしを襲う。嘘だろう、こんな……。
侵入者の姿がそこには映っていた。エントランスホールをゆっくりと歩くその女は、その手に拳銃を構えていた。その顔には、喜びも、悲しみも、何の感情も浮かんではいない。
ただひたすらの、虚無。
わたしは恐怖を覚えた。殺される、それはほとんど確信に近い予感だった。息がだんだんと荒くなっていく。吐き気を感じ始め、頭痛がいっそう酷くなる。
ふと、さっきの電話で未玖の背後から響いていた、あの乾いた音を思い出した。
「未玖……」
あの時未玖は、今と同じ拳銃をその手に構えていたのだろうか。
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