英里

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英里

 次の日,学校は大騒ぎになっていた。裕美子が死んでからわずか数週間で,虐めていた側の尚子が同じ場所で身を投げたことで学校中が裕美子の呪いだの,次は律子かそれとも英里かと囁かれた。  そして尚子の身体から大量の精液が出たことで,SNS上で悪意のある噂話が拡がっていた。しかし英里は昨夜遅く,尚子が身を投げた時間に目の前で泣き崩れる尚子を見ていた。それは英里が自分の部屋で寝ようとしていたころ,窓ガラスが不自然な音を立てていたので鍵を掛け忘れて風で音を立てているのだろうと思いカーテンを開けた瞬間だった。  窓ガラスにホームレス達に囲まれる尚子を見たと思ったら,学校の屋上に裕美子と隣り合わせで並んで立っている姿が映しだされていた。  恐怖のあまり咄嗟(とっさ)にカーテンを閉めて,部屋の電気をすべてつけたままベッドの中に潜り込んだ。それでも尚子がホームレス達に責められる声や裕美子に必死に謝る声を聴き続けていた。  眠れない夜を過ごし,朝になり学校に行って初めて尚子の死を知り,恐怖のあまり腰が抜けて立てなくなった。その日以来,学校に行くことができなくなり部屋に引き籠っていたのだが,夜になると窓に映る尚子がホームレス達に責められる姿と裕美子に謝る声に悩まされ続けた。  律子に相談しようと何度もLINEをしたが,既読にはなっても一切返信がなかった。きっと尚子も同じような罪悪感に耐えられなくなって学校の屋上から身を投げたのだろうと思い,英里も必死に心の中で裕美子に謝罪を続けた。
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