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「へへっ、ばっちし。これで今夜は楽しみだなー」
――その日の夜。首筋を擦りながら思い悩む。
(どーすんだよ、これ……)
ちょうど髪で隠れているため透にはまだ気づかれていない。
しかし、一緒にお風呂に入るのが同棲を始めてからの日課のため、
気づかれるのも時間の問題だ。
「葵ちゃん。ご飯の前にお風呂先入ろっか」
「あ……いや……今日は別々に入んね?」
「なんで?」
「たまには一人でのびのび入るのもいいだろ。二人じゃ、湯船狭いし。
そもそも毎日一緒に風呂入るなんて子どもじゃねぇんだから、もうやめにしようぜ」
動揺を悟られないように視線を逸らす。
無意識に首筋を触ってしまう。
「さっきからそこ気にしてるよね」
「え? べ、別に……」
腕を掴まれて横髪を払われた。
透は一瞬目を見開くと、冷ややかな表情で首筋の痕をなぞる。
「俺、こんなところに痕付けた覚えないんだけど」
「違っ……これは……」
「またあいつか」
突如、低くなった声に背筋がぞわっとする。
萎縮して、身を縮まらせた。
「今日は……ちゃんと抵抗した……」
「結果されてるなら意味ないねぇだろ」
透の昔を思い出させるような凄む態度に声が震える。やっとの思いで声を絞り出した。
「……るから」
「何? 聞こえない」
「なんでもする……から……許して」
透は首筋に添えていた手を移動させて俺の耳を擦る。触れられただけで強張った体はびくんと跳ねた。
「葵はいい子だから、どうすれば俺が満足するかわかるよな」
おそるおそる頷くと、透は微かに笑った。
「今日は学校じゃないから最後までするけどいい?」
「さ、最後って……あれ以上先があるのかよ」
「あるよ。この間よりも、もっと、気持ちいいことしてあげる」
期待と恐怖が入り混じって、背徳感に似たドキドキが押し寄せる。
従順を示すように透の胸に身を預けると、導かれるように寝室に連れて行かれた。
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