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「へぇ、なるほどねぇ、興奮するんだぁ」
「違う! 俺じゃなくてお前が!」
「葵ちゃんの気持ちはよくわかったよ。次回もお楽しみに」
そう言って透は横に寝そべり、俺を抱きしめてくる。
お仕置きの後に与えられるご褒美の時間。甘えるように身を委ねた。
「また話を蒸し返すけど……なんで俺にはこんなことすんの?」
「葵ちゃんが何をしても嫌いにならないって言ってくれたからだよ。
俺ね、自慢じゃないけど、昔からモテてたんだ」
「知ってるし、普通に自慢だよ、それ」
冷静にツッコむと透はあっけらかんとした顔で笑う。
砕けた表情から少しだけ切なげな表情になって、俺の頬を撫でた。
「言い寄ってくるのはいつも相手からだったのに離れていくのも嫌いになっていくのも全部相手からだったんだ。
だから葵ちゃんのことも好きになっていく度にいつか離れるんじゃないかって不安だった」
透は以前にも似たようなことを言っていた。
その思いがあったからこそ、美咲と付き合ってもいいと言ったのだと。
大好きな透に拒絶された時は堪らなく悲しくて、苦しかった。
だけど、あれはお互いに思い合っているからこそすれ違ってしまったのだと今ではわかっている。
「心配しなくても、俺は透のこと嫌いにならないよ」
愛情は示すように手を握りしめると、透は嬉しそうに微笑んだ。
「うん……ありがとう。葵ちゃんの愛情はちゃんと伝わってるよ。
俺が好きって聞いたらいつも真っ先に好きだって答えてくれるのも嬉しかった」
透は俺の体を力強く抱き締めて、腕の中に閉じ込める。
「俺を好きでいてくれてるのはわかってたはずなのに
その答えがいつか返ってこなくなるんじゃないかって怖かったんだ。
あんなこと言わせてごめんね……嫌いだなんて、ほんとは言いたくなかったよね……」
透の声が震えている。
力強く抱き締められて顔を見ることはできないけど、多分……。
「透泣いてる?」
「泣いて……る、ない」
「どっちだよ」
軽く鼻をすする音が聞こえてきた。
きっと、俺が顔を上げられないようにわざと強く抱き締めているのだろう。
達観して見えて、実は少し弱いところがある。でも、そんなところも含めて今は好きだ。
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