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こういう時、ひー君から目を逸らせない。
上手く説明ができないけれど、逸らしてはいけないと、身体が覚えている。
「僕だけの可愛い可愛い日鞠。」
依然、憤りを瞳に宿らせる彼に組み敷かれた私を支配するのは、恐怖でも歓喜でもない。
強いて言うなら、服従心に近い物。
「好きだよ、日鞠。」
私の世界はひー君だけ。
ひー君は、生まれた時から変わらず、ずっとっずっと私の傍にいてくれるの。
醜くて、ドジで、何の取り柄もない私なんかを見放さずに隣についててくれる。
「うっ……。」
首筋を這っていた冷たいひー君の手が、唐突に私の首を締め付ける。
酸素を奪われ、苦痛に歪む私の顔を満足そうにひー君は見つめている。
締め付けは窮屈になる一方で、徐々に意識までもが遠のいてくる。
本能がこの苦しみから解かれたいと切望する時、甘美な声が降りかかる。
「日鞠、愛してるよ。」
「…ひー君……。」
「日鞠は僕の事愛してる?」
無邪気に首を傾げて笑うひー君は、どんな表情をしていてもとても綺麗だ。
「愛してるは?」
朦朧とする意識の中、私は必死に首を縦に振った。
「愛…してるよ。」
嫌いなわけがない。
だって、私にはひー君だけだから。
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