王様のお召し物

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仕立て屋は黄金色の鎧を運んで参りました。 「王様は国を治める唯一無二の騎士!そのバカみたいな筋に……げふんっげふんっ……威厳ある肢体を包むには、もはやこれ以外にございません」 要するに布はダメだと判断した仕立て屋。しかし、当の王様は大喜びです。腰をるんるん振りながら鎧を装着しました。 「なんと!仕立て屋!わかっておるではないか!いかにもこれは王たる私が着るにふさわしい衣装!礼を言うぞ」 「もったいなきお言葉。しかしながら王様、くれぐれも所作にはご注意くださいませ」 「む。その心は?」 「えーっと、ですから……いきなり激しい動きをするとか極端に力の入るポーズを取るとかはなるべくお控えに」 「力の入るポーズ?……ああ!これのことか!ほんぬおおおおおーーー!!」 合点がいった王様はくるりと仕立て屋に背を向け、とどめ言わんばかりに広背筋を隆起してみせました。 バック・ラットスプレッドと言います。 鎧は爆発したかのように粉々になりました。 「………………」
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