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私はためらいませんでした。魔女から王子の居所を聞き、迷うことなく王子の胸に短剣を突き立てました。これで姫様は、私のところに戻ってきてくださる。喜びにあふれる私の胸とは反対に、王子の血を足に塗り込まれる間、彼女はずっと狂ったような叫びを上げていました。
それでも私は、彼女に戻ってきてほしかったのです。
彼女を失いたくなかったのです。
たとえ、どんなに彼女に憎まれたとしても。
姫様は小さく身じろぎすると、ためらいながらも、私の方へと体を預けてくれます。
ああ、彼女が今、私の腕の中にいる。
その感触をもっと確かめたくて、私はますます強くその体を抱きしめました。
彼女が、ふう、っと小さく息をつきます。
その胸の中に、今はどんな気持ちを抱いているのでしょうか。
私のことを愛してほしいとは思いません。憎まれたままで良いのです。
あなたが、そばにいてくれるだけでいい。
月のひかりが水中を照らし出します。
とても美しい景色なのに、この景色を見る度に、あなたは悲しみに暮れるのでしょう。
それでも私は、ずっとあなたのそばにいます。
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