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人魚姫の侍女
柔らかな月のひかりが、部屋の中に差し込んでいます。
ゆらゆらと揺れる波間に月明かりの輪が浮かび、室内は淡く照らされていました。姫様は月のひかりを見つめたまま、ぼんやりと椅子に腰掛けています。
ここは海の底にある王国。今夜、お城の大広間では盛大なパーティが開かれています。大広間は真珠の明かりに照らされ、その下でたくさんの人魚たちが踊ったり歌ったりしていました。そのきらびやかな光景に、私は感嘆のため息をつき――――しかし、隣にいる姫様の顔色がよくないことに気づいて、すぐに部屋に戻ってきたのです。
今、私は姫様のそばで着替えを手伝っていました。蜂蜜色の髪を飾る宝石を外して、ゆっくりとその美しい髪を梳いていきます。それから、胸元を飾る珊瑚のネックレス、尾(おみあし)を飾る真珠のアンクレット。ひとつひとつ外して、丁寧に宝石箱へとしまっていきました。ひとつ、またひとつ外すたびに、姫様がふうっと息をつくのが聞こえます。よほど疲れていらっしゃるのでしょう。
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