人魚姫の侍女

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「ねえ、どうしてなの!? 殺すなんて、どうして、そこまでするの!? どうしてそんな、おそろしいことができるの!?」 「姫様……」  私はベッドのそばに行くと、姫様の冷たい肩をそっと抱き寄せました。彼女は一瞬びくりと体を震わせましたが、私の腕の中から動こうとしません。  叩いても、噛みついても、どんなひどい言葉を投げつけてもいいというのに。姫様は決してそうしません。  それは、あなたが少なからず、私のことを好いてくださっていると……そう思って、良いのでしょうか。  姫様は何も言わず、青ざめた顔のまま私の腕に抱かれています。  私はあの夜、あなたからの罰ならば、すべて受け入れる覚悟を決めました。  あなたにどんなに憎まれてもいい。  私自身がどんな罰を受けることになってもいい。  あなたを失ってしまう恐怖に比べたら、そんなことは些細なことなのですから。  あの夜のことを思い出しながら、私はゆっくりと空を見上げました。  正確には、そこに空はありません。私に見えるのはどこまでも広がる海。空は、この海を出た先、そのさらに上にあるといいます。私には手が届かない、とても遠い世界です。  姫様は、海の上にある人間の国の王子に恋をしました。そして、禁じられた魔法の薬を飲んで人間になったのです。     
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