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姫様が行方不明になった日、私は初めてそのことを知りました。
幼い頃から侍女として彼女に仕えてきた私は、姫様のことを誰よりもよく知っているつもりでいたのに。彼女は私に何も教えてくれないまま、遠い世界へ行ってしまいました。
彼女のいない日々は、とてもつらく淋しいものでした。そして、そのとき私は、心から姫様をお慕いしていることに気づいたのです。
私は魔法の薬を作ったという魔女の元を何度も訪れました。薬を作った魔女が悪いとは、少しも思っていません。私はただ手がかりが欲しかった。どんなに小さくてもいいのです、姫様を助ける手がかりさえあれば。
そしてある夜。魔女は私に、信じられないことを話しました。姫様は人間の王子と結ばれなければ、泡になって消えてしまう。そして、今夜は王子と人間の王女の結婚式。今夜、姫様は泡になって消えてしまうと。助ける方法はただひとつ。王子を殺し、その血を姫様の足に塗り込むこと。そうすれば、彼女は人魚に戻ることができる。魔女は私にそう告げました。
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