枝分

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「楽しいよ?亮司さん優しいし、美味しいお菓子も持ってきてくれるし、勉強だって教えてくれるし…」 「それはよかった。田井中様がお持ちするお菓子ですから銘菓ばかりでしょうしね。」 耳障りな陶器の音に負けないように少しだけ声を張り上げたのに、涼ちゃんの声は静かなもので、それが少しの怒気を孕んでいることに僕は気付かないふりをした。 気付かないふりをしたのが、多分間違いだった。 「涼ちゃんも一緒に混ざればいいのに。亮司さん優しいから、きっと一緒に…」 ガチャン、と一等大きな音を立てて、目の前にティーカップが現れた。 僕は驚いてティーカップを凝視する。衝撃に揺れる紅茶は辛うじて一滴も溢れていなかった。 「…一介の使用人には、許されないことです。」 血を吐くようにそう言った涼ちゃんは深呼吸を一つしてお辞儀をすると、くるりと背を向けて部屋を出て行ってしまった。 その時、ざわりと身体の中の血が騒ぐ。 僕はそれを、怒りだと思った。
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