開花

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開花

「卒業おめでとう、大樹君。」 卒業証書を抱えて帰ってきた僕を出迎えたのは、大きな薔薇の花束を抱えた亮司さんだった。 僕はありがとうと微笑んで、その花束を受け取ろうと歩み寄る。 「その、これは…卒業祝いじゃなくて、プ、プロポーズを…」 しどろもどろになりながら一生懸命に伝えてくれる言葉を、僕は曖昧な笑みを浮かべて待った。 僕は、ずるい。 涼ちゃんがイギリスに発ってから、僕はこれまで以上に亮司さんの側にいた。亮司さんなら、涼ちゃんのことを忘れさせてくれると思ったから。 亮司さんは真摯に僕と向き合って、ゆっくりと仲を深めようとしてくれた。僕らは手も繋いでいない。触れるのは結婚してから、と亮司さんは言った。 とても優しくて、とても素敵な人なのに。 どこに行っても、何を話していてもチラつく涼ちゃんの影。僕は結局、涼ちゃんを綺麗さっぱり忘れ去る事が出来ないまま、亮司さんの手を取ろうとしている。
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