枝分

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枝分

田井中(たいなか) 亮司(りょうじ)といいます。えーと…よろしく、お願いします。」 「仙崎 大樹です、よろしくお願い致します。」 その年は気温が高く、桜の開花が早かったために僕の高校の入学式は既に桜の花が散ってしまっていた。折角撮った写真は所々緑が生い茂り、主役の僕は覇気のない曖昧な作り笑いを浮かべている。 浮かない笑顔の原因はわかりきっていた。 この入学式の後に、僕は初めて嫁ぎ先のαの方にお会いする予定があったのだ。 真新しい学ランに身を包んだ僕と違い、その人は身体にぴったりフィットしたスーツを身につけていた。キリリとした涼しげな目元が印象的な男性で、その精悍な顔立ちを破顔させると頬にできる笑窪(えくぼ)が可愛らしい2つ年上の人だった。 初めて会ったその日は二人で茶を飲み茶菓子を食べ、自己紹介のようなぎこちない会話をぽつりぽつりと交わした。随分と腰が低く丁寧な人で、世間一般の『優秀だがお高く止まったエリート』というα像からはかけ離れた人だった。 「良いお人で良かったですね、大樹様。」 「うん…」 高校を卒業したら、あの人と結婚し、あの人と番になる。     
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