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水飛沫の騒ぎ立つ波間から、令子はあの女をじっと睨み続けた。どう見ても母を離婚に追い込んだあの加納瑠梨という女を許す気にはなれなかった。あの女のなりふり構わぬ戯れ、今にも父親にキッスでもし兼ねない姿態に、令子に復讐心にも似た感情が湧いてきたのだった。
令子は意図的に父親と加納瑠梨が寝そべっているところに行った。
「なんや、令子か、おまえも海に来とったんか、ひとりなのか?・・・・」
父親は呆気にとられたように見上げた。
「娘さんなの?そうなの。ボーイフレンドはいらっしゃらないの?」
加納瑠梨は、迷惑そうにツンとした面持ちで令子を見つめた。
令子は加納瑠梨を睨みつけ、無言のまま、その場を去った。
「娘さん、不機嫌みたいだわね。何か嫌なことでもあったのかしら?」
「娘は、まだ悩み多き年頃や。まだ若いのや。今晩は、僕の家に泊まってくれへんか」
「娘さんは大丈夫なの? 気になるわ。まずはディナーだけにしましょうよ。娘さんもご一緒で」
「そうやな、最初はその程度でよいか。娘は明日、東京に戻ることやし」
「料理は、わたしが作るわ」
「そうか、娘も喜ぶやろう。なにがあても僕たちの愛は真実やねんやから」
「あなたを信じているわ…」
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