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「こんな処に住んどるのかよ。上品な高級住宅地やな。防犯にも厳しそうやで。派手にやるわけにはいかへんな。騒ぎだてるとワイらの身がヤバくなりそうやで」
「だったら、その防犯を逆手にとるんや。わてらが被害者ということするんや。ここは例の心理作戦でいこうか」
「そうやな。お姉ちゃん、好い方法がある。要は、あんたの親父がその女を嫌いになればいいんやろう。わてらに、任しな」
「わかったわ。でも、父には手を出さないで」
「もちろんや。その代わり五万円ばっかり用立てしくれへんか」
「わかったわ。成功したら払うわ」
「成功するかどうか、わかるわけへんやろが。ともかく手間賃っちゅうことで五万でいい」
「手渡し、それとも振込?」
「振込にしたれや。あんたのメールアドレスを教えてくれんか。振込先の銀行名や口座番号を通知するから。約束を破ったら承知しぃひんからな。あんたも、あんたの親父の身もどうなるか知らへんでえ」
「承知したわ」
彼女は自分のメールアドレスを磯村という男に教えた。もっともメールアカウントさえ間違えなければよかった。@マークから後のドメイン名は誰もが知る有名携帯通信会社のものであったから。
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