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その夜、十一時頃だった。父親を乗せた車が病院から戻って来た。
令子が駐車場まで出迎えに行くと、加納瑠梨は令子の顔を見て、なぜか機嫌悪そうに言った。
「令子さん、怪我の程度は大したことはありませんでした。一週間もすれば入浴ができるそうです。今夜はこの家に泊まりたいと思います。お父様の看護が必要ですので。令子さん、明日が早いのでしょう。そろそろ就寝されたら如何ですか?」
令子は受け容れざるを得なかった。
「令子さん、言いたくはないけど、あなたはわたしを殺そうとしていたのね。殺せるものなら殺しなさいよ。あなたのお父様はわたしを守ってくれたのよ。自分の生命を投げ出してもよ。あなたも、しかと見たでしょう。あなたのお父様はわたしのものなのよ。他人もうらやむほどの愛し合う仲なのよ。令子さん、さっさっとこの家から出て行きなさい。いいですか、あなたは殺人未遂者なのよ。このことを頭の中に叩き込んでおきなさい」
加納瑠梨は既に豹変していた。
「瑠梨さん、余計なことは言わんでくれ。娘は反省しとるのやから」
「いいんです。甘えやかせ過ぎです。わたしが躾し直しますから・・・・」
「なによ、あんたみたいな誑かせ女には反吐が出るわ。あんたこそ、さっさっとこの家から出て行きな!」
令子は悔しくてならなかった。吐き捨てるように言葉を投げた。まるで逃亡者のように速足で二階の自分の部屋に戻った。
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