白幸が舞う

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小学生向けの読みものなので、行間は広め字も大きめでサラッと読めてしまいそうでしたが、これ以外の本は目に入りませんでした。 リビングに戻ると相変わらず、ゆきは日だまりの中で丸まっています。 そのとなりにゆっくりと腰を下ろして、私は持ってきた本の表紙をめくりました。 夜になると父が仕事から帰ってきて、久しぶりに家族三人と一匹で食卓を囲みました。 ここで少し驚くことが起きたのです。 昔と比べると、出されたゆきのご飯は明らかに量が減っていました。 最近はこの量でも残してしまうことが増えたそうです。 しかしそのご飯をゆきは一気に平らげ、鳴き始めました。 こんなゆきの姿を見るのは、私も初めてでした。 「どうしたの、ゆき。珍しいわね、そんなに鳴いて」 「もっと食べたいんじゃないか」 「まさか」 「でも、私もそう言ってるように聞こえる」 もちろん、猫語がわかるわけではありません。 わかるようになれたらどんなに楽しいことだろうと、何度思ったか知れません。 でも今のゆきを見ていると、何だかとっても嬉しそうに見えるのです。 みんなでご飯を食べられることが幸せだと、そう言っているように聞こえたのです。 半信半疑の母がゆきのお皿にご飯を追加すると、ゆきはまた美味しそうに食べ始めました。 それを見た家族に、笑顔の花が咲きました。 食器を洗い始める母の足元に座ったり、テレビを見ている父の膝の上に乗ったりと、それまでは定位置で丸くなるだけだったゆきが、昔のゆきに戻ったようでした。 そして私が寝るためにベッドに横になると、しばらくして静かに部屋にやってきて、私の首元で丸くなるのです。 私が1人で眠るようになってから、一日も欠かすことなくゆきは私と一緒に眠ってくれました。 初めてこの部屋で1人で寝ると言った日、暗闇が怖くて1人が寂しくてやっぱり両親のところへ行こうと思ったとき。 ゆきが私のところへ来て、寄り添ってくれたことを思い出しました。 伝わってくる体温に安心して、怖さなんて吹き飛んでしまって、心地良い眠りにつけたことを昨日のことのように思い出しました。 「ゆき、おやすみ」 ゆっくりと息をするその白い体がまだとなりにいることに安心して、私も眠りに落ちていきました。
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