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視線を自分の身体から上げて行き前を向くと、其処には何かがあった。
其処には何かが置いてあり、少年が目を凝らしながら見る。
海の様に広がる血。
そして、その広がる血に転がる様に物体に目が行くと少年の目が見開くと身体全身から血の気が引いた。
「あ、あぁ……あぁぁぁぁ!!」
転がっていた物体は人間。
正確に言えば人間“だった”モノだった。
その顔には見覚えがあった。
ついさっきまで夏休みの話をしていた友人の顔。
だがその友人の口や鼻、また目からは血が流れ出ており既に息絶えている事が分かる。
「な、なん、で……!!?」
ガチガチと歯を震えさせながら言葉を漏らす少年はもっと周りを見渡し視界を広げてみると、その友人には本来あるはずの両腕や両足が無かった。
そして友人だけでなく、そこにはクラスメイトだったであろう生徒の身体の一部や臓物などが散乱していたのだ。
「う……うぷっ……!」
その瞬間、少年の体内の底から耐えきれずこみ上げてくるモノが口から吐き出された。
「おぇっ……おぇぇ……がはっ‥‥かはっ‥‥」
胃の中の物を全て吐き出した少年の目には涙が浮かび、この現状に頭の中は混乱を巻き起こしていた。
(なんだ、この異様な空間は。どうして、こうなったんだ……。)
この狂った空間は夢なのか、なんなのか。
もし夢であるなら覚めてほしい。
だがこれは“現実”だった。
そしてこの空間に残された少年、成神海斗が考えたのはただ1つだった。
(この空間から出る。)
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