いざ、カスガの岩へ!

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いざ、カスガの岩へ!

 目覚めると、周囲は土壁で囲まれていた。僕の周りにはタンポポの綿毛があり、体を温めている。アリたちが用意してくれたのだろう。  ゆっくりと前足と後ろ足を動かし、即席ベッドから起き上がると羽根を広げてみた。問題はないようだ。  音色の方はどうだろう。  奏でてみると音自体は問題ないが、少しずれていた。寝ぼけているせいだろうか。少し動かし方を変えてみよう。  この動かし方ではダメ。では、この動かし方ならどうだろう。  おや、これはいい感じだ。  最初からもう一度奏でていると、一匹のアリが姿を見せた。 「楓の葉のキリギリス殿、おはようございます!」  彼女は、僕の普段生活している部屋の周囲を守るアリだ。兵アリとも言われている。言葉遣いは丁寧だが、外に出ているアリより体が一回り大きく、戦いでも強いという話を聞いたことがある。 『おはよう』 「早速練習ですか、もう少しゆっくりされればいいのに…」 『そうはいかないよ。常に新しいものを取り入れていかないと』  僕らキリギリスは生まれながらの演奏家だ。奏で続けるのが仕事だし、普段はこうしてアリたちに保護してもらい、必要なら演奏をして楽しませる。     
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