湖のキリギリス

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 他の3人は無事だろうか。少し不安だったが、翌日の夜更けに羽音を立てると、3人ともそれぞれの羽音で返事をしてくれた。  それから数日後。羽根の手入れをしていたら兵アリが姿を見せた。 「失礼します。楓の葉殿…お客様がお見えです」  僕に来客など珍しいこともあるものだ。きんもくせいだろうか。それともアジサイだろうか。 『わかった』  そう答えて羽根をたたむと来客は姿を見せた。僕よりも一回り大きい女性であり、その姿には見覚えがあった。 『貴女は湖殿と一緒にいた…』 「お久しぶりです楓の葉殿」  彼女は、湖のキリギリスと一緒にいた女性だ。他にも女性キリギリスは何人かいるが、美貌で彼女に敵う者はそうはいない。 『無事に冬を越せたのですね。姿を見ないので心配しました』 「実は、カトーのアリたちにお世話になりまして…」  その言葉を聞き、僕は笑みを消した。兵アリを見ると彼女も厳しい表情を返して来た。 「確か、あのコロニーは…」  兵アリが畏まった様子で言うと、女性キリギリスはゆっくりと頷いた。 「ええ、人間のばら撒いた毒餌で…」  数日前に、カトーという人間はアリが家の中に入って来たと、カスガという人間に愚痴を言っていた。その少し後にカトーは、動く巨大な金属に乗ってどこかに出かけたので、その時に毒餌を手に入れたのかもしれない。     
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