いざ、カスガの岩へ!

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 カスガの岩と言ってしまったが、よく考えればこの一帯全てがカスガと呼ばれる地域だった。上まで見渡すのに一苦労なほど切り立った崖が、まるで国境線のように、この地域を囲い込んでいる。  地域の名の由来は、この崖を築き上げた人間の名前をから来るそうだ。木と特殊な素材でできた山の中に住み、稀に山を動かして姿を見せる、とアリたちは言う。 「ちなみに、人間というのは物凄く大きな生き物で、個体によってはあの崖より大きいのです」 『なるほど。僕も人間なら見たことはあるけど、あの崖よりは小さかったな』  そう答えると、兵アリは表情を曇らせた。 「よくご無事でしたね。人間の子供…特に男性の子供は我々を捕獲しようと手を伸ばしたり、場合によっては踏みつけてくることもあります」 『僕が遭ったのは、腰の曲がった女性だったからね』  そう言いながらも人間の恐ろしさを思い出した。これは知人のキリギリスから聞いた話だが、捕獲しなれた子供に捕まると、死ぬまで透明な箱に閉じ込められて一生を過ごすことになるという。いや、猫やカラスといった相手の方が厄介かもしれない。この手の動物に捕まると生きたままかじられてしまうそうだ。     
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