いざ、カスガの岩へ!

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 辺りに注意を払いながら、勉強会の会場である岩を目指すが道のりは長い。このカスガの地には、中央の岩だけでなく、楓の木、アジサイ、きんもくせい、カエルのような形の岩がある。  それらの植物やオブジェクトを囲むように、無数のワイルドストロベリーの草むらが広がっており、中央の岩にたどり着きたければ、ワイルドストロベリーの草むらの中か、平らに開けた石の広場を通るしかない。広場には奇妙な形の金属の大岩があり、人間が割くと走り出すらしい。  僕らは迷うことなくワイルドストロベリーの草むらを進むことにした。ここなら身を隠せるし、もしも奇妙な形の金属が動き出しても、この草むらまで乗り込んでくることはない。  しばらく歩くと、羽音が徐々に大きくなり始めた。一足先に到着した仲間たちが草葉の陰から演奏しているのだろう。  目的地にだいぶ近づくと、振り返ってアリたちを見た。 『護衛…ありがとう。ここから先は1人でも大丈夫だよ』 「演奏中もお気を付けください。猫や野鳥に襲われるかもしれませんので…」  そういえば、勉強会の最中に動物に襲われるハプニングが何度かあった。逃げ遅れて捕食された仲間もいるので油断できない。 『気を付けるよ』  僕もまた草の陰に身を隠しながら、そっと演奏をした。仲間の何人かがこちらを意識したらしく、羽音の向きが変わった。 「やあ、楓の葉」  まず語り掛けて来たのは、きんもくせいのキリギリスだ。彼も僕と同じようにアリと共存する良きライバルだ。 『お互いに冬を越せてよかったよね』 「ああ、再開を分かち合おう!」  きんもくせいは、自慢の羽根を器用に操った。彼の音色は低音がよく出るため、深みのある落ち着いた曲調になる。僕も負けじと羽根を操った。     
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